COLUMN/ESSAY

サーベラス・ショール

 サーベラス・ショールは、米ポートランドを拠点とする一風変わったバンドだ。94年の結成以来、何度かのメンバー・チェンジを経ながら、音楽性も次第に変化させてきて、現在は男女のツイン・ヴォーカルを擁する6人編成で、カントリー・サイケ・アヴァン・ポスト・ポップとでも名付けるべき、摩訶不思議なサウンドを奏でる。
 とはいっても実を言うと、このバンドは以前から聴いていたのだが、テンポラリー・レジデンスから2002年に2枚組で出たアルバム"Mr. Boy Dog"の時点までは、余りピンと来ていなかったのだ。向こうのプレスの評判はかなり良かったのだが、僕にはプログレ風味とフォーク調のバランス感が、ちょっと散漫に思えてしまった。僕がハマるきっかけになったのは、彼らがシリーズでやっている他アーティストとのスプリットCDの第二弾で、アルヴァリウスB(その正体はサン・シティ・ガールズのアラン・ビショップ)との共作"The Vim and Vigour"、とりわけラストに置かれた十数分に及ぶ大曲"Ding"を聴いたことだった。これほどに泣かせる民謡ミニマル・サイケは他にはない。正直、こんなバンドだったっけ?と思わず旧作を聴き直してしまったくらいだった。
 そして満を持して放たれた最新アルバム"Charming The Knoblessone"は、紛うかたなき傑作だった。エンジニアリングとプロデュースは、サン・シティ・ガールズやジョン・フェイヒイ、クライマックス・ゴールデン・ツインズ等の懐刀として知られる鬼才スコット・コルバーン。突拍子もない発想と確かなスタジオ・テクニックを併せ持ったコルバーンとのコラボレーションによって、サーベラス・ショールは彼らが蓄えてきた多様で多彩な音楽性を単なるヴァラエティとしてではなく、いわばポップなキマイラ(複合生物)として変成することに成功したのだった。
 もしキャプテン・ビーフハート&ザ・マジック・バンドとインクレディブル・ストリング・バンドが合体していたら?‥‥あるいはユージン・チャドボーンとシャーリー・コリンズが共演していたら?‥‥アシッド・カントリーとパンク・ジャズとアンビエント・ノイズのミクスチャー?‥‥こんなありえないようなサウンドが聴きたかったら、今すぐサーベラス・ショールをチェックするべきだ。
(初出:クロスビート)

Last Update : 2003/11/16