COLUMN/ESSAY

デッド・レイヴン・クワイア(「OUT THERE!」)

 デッド・レイヴン・クワイアは、ポーランドのクラカウ出身のディガー・スモールケンによるプロジェクトだ。彼は政治的な理由で家族とともに96年にアメリカに亡命し、現在はテキサスに住んでいる。
 デッド・レイヴン・クワイアは、もともとスモールケンと謎の(?)女性ストリッパーとのデュオとしてスタートしたというが、その後、別の女性にメンバー・チェンジし、更にはソロになった(ふたりの女性の正体は明らかにされていない)。彼はすでに20枚近いアルバムやシングル(いずれもCDRだけど)を、あちこちのマイナー・レーベルからリリースしている。
 その音楽性は、彼の出自から来るものだろう東欧的な民謡の要素と、アシッド・フォーク、サイケ、ノイズ、ブルース、抵抗歌、キャバレー音楽などなどが複雑怪奇に混じり合った、なんとも言えずユニークなものである。しかし、アコースティック楽器による、どこか神秘的な演奏と、時としてエロティックでさえある歌声(歌詞は「クマのプーさん」で有名なA.A.ミルンや、W.B. イエィツなどの詩から採られている)の組み合わせは、けっして奇矯なものではなく、むしろじっくりと聴き込みたくなるような美しさと深さを持っている。こんな才能が埋没している(知っている人は知ってるわけだが)ということが、現在の音楽シーンの歪みを証立てていると言ってもいいかもしれない。
 デッド・レイヴン・クワイアのリリースで、比較的入手しやすいのは、秘教的な音響フォークの秀作を次々と送り出しているジュエルド・アントラーと、アシッド・マザーズ・テンプルの別ユニットや、山本精一と向井千恵のデュオなんかもリリースしている注目のラスト・ヴィジブル・ドッグという、二つのレーベルから出ているCDRだ。いずれも妙に非現実的な、だがきわめて美麗な写真やイラストがジャケにあしらわれている。基本的に駄作はなく、どれかを試しに聴いてみて気に入ったら他も必ず好きになる筈だ。
 デッド・レイヴン・クワイアの作品のタイトルは末尾に「〜WOLVES(オオカミ)」が付いているものが異常に多い。そこには象徴的な意味が込められているのだろう。確かに、彼の音楽には、野生のオオカミのような、逞しさと凛々しさ、そして優雅さとが漂っているのだ。
(初出:CROSSBEAT)

Last Update : 2003/10/21