COLUMN/ESSAY

池田亮司君

 池田亮司とは彼が音楽家になる以前からの付き合いである。ある時、彼が、いささか唐突に言った。「実は自分で音を作っているんだけど……」。完成したらまっ先に聴かせる、と言われてから暫しの時が過ぎた頃、真白なジャケのCDが送られてきた。そこには『1000 fragments』というタイトルが、シンプルに記されていた。それを聴いて僕は、自分の友人が、おそるべき才能を持った音楽家であることに、まったく突然に気付かされた。そこには「音」に対する鋭敏な感性に裏打ちされた、シャープでハードコアな方法意識が、驚くべき完成度で波打っていたのだ。
 こうして、彼は現在われわれが知る「池田亮司」になった。ダムタイプの音楽担当者として世界を経巡りつつ、彼は『+/-』『0℃』『time and space』、そして『matrix』と、量産でも寡作でもない、まさにありうべきペースで作品を発表してきた。彼のディスコグラフィーは、強力に一貫しつつ前へと進んでいる。変わってゆく同じもの。彼は自分が何をすべきなのかを最初から完璧に把握しており、しかもその上で更に思考し、実験し、分析し、そして時にはそのすべてを忘却した上で、新たな次元を切り開いてみせる。
 彼が自分の作品に求める類稀な厳密さと精確さは、その見事にバランスの取れた人間性と、どこかで繋がっているのだと思える。その音楽はけっしてコンセプチュアルではない。誤解を恐れずにいえば、「池田亮司」とは、やはり僕の知っている池田君そのものなのだ。

Last Update : 2003/09/19