これまでにも何度か、ニューヨークを拠点とするユニークなサイケ・ロック集団、タワー・レコーディングについて触れてきたが、今回はその中心人物であるマット・ヴァレンタインのことを書きたいと思う。
すでに彼は6枚ものソロ・アルバムを出している。一番最初のMVホロスキャナー・エキジビジョン名義"Egosynchronicity Music"以後、しばらく時間が開いていたが、自らのレーベルであるチャイルド・オブ・ミクロトーンズをCDRベースで設立して、現在はタワレコの正式メンバーでもあるティム・バーンズの協力を得て制作した、本名での最初のアルバム"Fantasizes Daydreams ...."以後、"I've Been Drinking Cocola out of a hollow log"、"Tonight One Night Only! MV & EE in Heaven"、"Ragantula"と、立て続けにリリースしてきた。どれもCDRのみの限定(ジャケットなどのアートワークも妙にヘタウマの自筆イラストがあしらわれたハンドメイドなもので、マニア心を刺激する)盤なのだが、"Tonoght"だけは別レーベルからLPで再発されている。
タワレコでは、エレクトロ・アコースティック・サイケともいうべき音楽性を追求しているが、ソロのほうはもっとパーソナルな雰囲気で、シンガー・ソング・ライターとしてのヴァレンタインの生の魅力を、十二分に堪能することができる。ニック・ドレイクとかティム・バックレーとか、あるいはインクレディブル・ストリング・バンドとか、思いつく名前は色々あるが、もちろん一筋縄でいかない音作りのセンスも随所で感じられはするものの、奇をてらったような部分は殆どなく、むしろ極めてオーソドックスな、王道のサイケ・フォークという感じさえする。
最新作は、イタリアのフリンジス・レコーディングから出たLPオンリーのアルバム"Space Chantie"。まちがいなくこれは彼の最高傑作だろう。PG SIXやティム・バーンズ、サマラ・ユベルスキー、ディーン・ロバーツなど、タワレコのメンバーおよび、その周辺のミュージシャンたちが参加して、素晴らしくファンタジックなサウンドを聴かせてくれる。程良く脱力したヴァレンタインの歌声もたまらない。そうそう、ボニー・プリンス・ウィリーやキャット・パワーの新作にグッと来た人にも絶対オススメです。