この連載もこれほどの長期に渡ってくると(いったい何年目なんだろう?)、だんだん記憶も怪しくなってくるが(笑)、確か随分昔に一度紹介したことがあると思う、スウェーデンのトンデモなくユニークなミュージシャン、ケティル・J・ブランズダル。サーストン・ムーアのエクスタティック・ピース!(という単語もいったい何度書いたことか!)からもソロ・アルバムを出したりと、一部でマニアックな注目を集めつつもマイナーな存在に留まっていると思っていたら、ここへきて、ひょっとすると表舞台に浮上しそうな展開になってきた。というのは、彼がここ数年、ソロも他のユニットもほぼ休止して集中してきたバンド、ノクサクトが、アメリカで人気を高めているのだ。
ノクサクトは、ベースを弾くブランズダルと、ヴィオラとヴァイオリンのニルス・エルガ、ドラムのヤン・クリスチャン・L・キヴィクのトリオ編成で、ドローンや音響ノイズ的なブランズダルの他の活動とは違い、ヘヴィ・ロックと呼んでいいようなハードでドライヴィンな音をやっている。ギターではなくヴァイオリンという所がミソなのだが、とはいえ精妙な要素は皆無で、とにかくひたすらラウドでアグレッシヴなのだ。そもそもはブランズダルのメタル・ノイズのソロ名義だったのだが、バンドになってから活動を本格化させ、ライトニング・ボルトやサイティングスでお馴染みのあのロード・レコーズと契約、顔見せ的な"Turning It Down Since 2001"に続き、先日、なんとニューロシスやブルータル・トゥルース、ミスター・バングルやジョーブレーカー等を手掛けてきた辣腕ビリー・アンダーソンをプロデュースに迎えた新作"The Iron Point"を発表した。
前作の段階では、まだ未消化で混乱した雰囲気が残っていたのだが、この新作ではどの曲もきっちりとまとまっていて、しかも異様にカッコよい。すべての楽器が一体となりながら、しかし曖昧に溶け合ってしまうことはなく、過剰な激しさの中にも一種独特のロマンチシズムが漂うサウンドになっている。ラストでなぜかパールス・ビフォー・スワインのカヴァーをやっているのだが、これがまた見事にハマっているのだ。
(初出:クロスビート)