南米コロンビアの遺跡から名前を採ったサン・アグスティンは、しかしコロンビア出身ではなくて、米国ジョージア州を拠点とするインスト・トリオ・バンドだ。メンバーは、デヴィッド・ダニエルとアンドリュー・バーンズという2人のギタリストと、ドラマーのブライアン・フィールデン。ベーシストはいない。演奏はギター×2+ドラムスのみで行われ、他の楽器やエレクトロニクスなどは一切使用していない。すべて即興演奏による、そのサウンドは、たびたび共演している孤高のギタリスト、ローレン・コナーズがバンドになったような感じというか、日本でいえば静謐な時の不失者から声を抜いた時にも近いが、淡々とした弦の爪弾きが織り重なっていき、フリー度の高いリズムが絡んで、いつのまにか激しく高揚していたり、また落ち着きを取り戻したりする、どこか荘厳でさえある独特の空気を持っている。
彼らのアルバムとしては、99年に出された"AMOKHALI"があるが、それ以外は、ダニエル&バーンズの二人が、コナーズとその奥方シュザンヌ・ランギルと共演したアルバム"LET THE DARKNESS FALL"と、バンドにコナーズ抜きでランギルだけが歌で参加したEP"PASSING SONG"が聴けるくらいで、音源はあまり存在していなかった。もちろん、それらだけでも、その戦慄的でさえあるディープな音の佇まいは十分感じ取れたのだが、この度、あのテーブル・オブ・ジ・エレメンツから、彼らのライヴを3枚組CDに収めた豪華なボックス・セット"THE EXPANDING SEA"が登場し、遂にその音楽性の全体像が明らかになった。
シンプルとしか言いようがない編成で奏でられる、異様で、だが優雅極まりない表情を湛えたサウンドは、「ロック」というものが、どこかで置き去りにしてきた、豊かな可能性を我々に思い出させてくれる。サイケデリックで、ブルージーでジャジーで、アンビエントでミニマリスティックで、ノイジィでエモーショナルな、無数の発見に充ち満ちた、驚異の演奏だ。
D・ダニエルは先頃、自らも運営に関わる新レーベル、アンチオピックからソロ作"SEM"を発表した。こちらはフィールドレコーディングを、おそろしく静かな、ほとんど無音に近い音響へと加工してしまった、実験的なアルバムである。
(初出:CROSSBEAT)