REVIEW/COMMENT

disc over1(スイッチ2003年3月売り号分)

エイフェックス・ツイン
" 26ミキシーズ・フォー・キャッシュ"
BEAT RECORDS
 実に身も蓋もない、でも正直なタイトル。リチャード・D・ジェイムズが過去にこなしたリミックス仕事を集めた2枚組。とはいえ手抜きという事ではまったくなくて、むしろオリジナル曲と同等の超個性的なエイフェックス節が堪能できる。最新作より好きかも?

オウテカ
"ドラフト7.30"
BEAT RECORDS
 全世界のエレクトロニカ・ファン(&作り手も)が戦々恐々としつつ待ち望んでいたニュー・アルバム。ソフトウェアの可能性の極限を模索していた過去数作の実験を経て、先鋭的な音作りはそのままに、まるで初期に戻ったかのようなカッコいい曲が並ぶ。流石。

大友良英
"blue"
WEATHER/HEADZ
 映画音楽の分野でも長年国際的に活躍してきた大友良英が自ら最高傑作と位置づける、魚喃キリコ原作、安藤尋監督、市川美日子主演の同名映画のサウンドトラック。過去の大友ワークスのどれとも異なる、繊細かつ雄大なフォルクローレ・ロック・アンサンブル!

キャリフォン
"クイックサンド/クレイドルスネークス"
THRILL JOCKEY JP/HEADZ
 シカゴはスリル・ジョッキーからシー・アンド・ケイク、ブロークバックに続く今年第三弾は、長らくマニアックな支持を得てきたポスト・ロックならぬポスト・カントリー・ロック・バンド。ウィルコやキャレキシコ等が好きな人なら絶対ハマる筈。名曲度高し。

スッパ・マイクロ・パムチョップ
"オバケ"
CHILDISC
 竹村延和のチャイルディスクから久々の新譜は、今やベテラン(?)のスッパさん。歌ものやバンド編成での試みが続いたが、今回は初心に戻って、なんともチャーミングで奇妙奇天烈なシンセ・インスト集。12分以上の大作「小さな巨人の考えあれこれ」が最高!

PLACE CALLED SPACE
"星と恐竜"
雨レコード
 PLACE CALLED SPACEこと大木美佐子、GYUUNEカセットの1stに続く、彼女自身の新レーベルからのCDR。ガット・ギターの弾き語り&インストに都市レコードのカヴァーの全7曲。ギタリストとしても歌手としても本物で大物。タイトル曲はマジで泣けます。

千葉レーダ
"ウルトラベリイベストオブ千葉レーダ"
OUT ONE DISC
 スタディスト岸野雄一のレーベルより、一部で話題の千葉レーダこと茂木淳一のミニ・アルバム。まさしくジャケット通りの音です。巷のエイティーズ・ブームに一矢報いる筋金入りのカフェバーディスコジゴロダンディな表層ポップ。岡村ちゃんより100倍強力?

植村昌弘
"1999"
ロコスミュージック
 仙波清彦、大友良英、PHEW、藤井郷子など名だたるアーティスト等との共演歴を持ち、自らもかつてはPON、現在はMUMUというバンドを率いて活躍する辣腕ドラマーが、打ち込みとドラムスだけを用いて独りで完成した、正規プレスとしては初のソロCD。偏執狂的なまでに複雑怪奇なリズムに脳髄が踊り出しそう。

TERRE THAEMLITZ
"Lovebomb"
MILLE PLATEAUX
 川崎在住のサウンド・アクティヴィストの新作にはジャケットに日本語で「愛の爆弾」とある。そう、これは彼(女)が、あの「9月11日」以後の愛について考察した作品で、LOVEを歌ったポップスが電子的に加工変形されていく。どこか儚い美しさを持つ一枚。

JOHN FAHEY
"Red Cross"
REVENANT
 いまだに哀しくてフェイヒイの曲を聴けないのだとジム・オルークは云う。だが我々は、このラスト・アルバムを聴くことで、かの不世出の音楽家を追悼しよう。これこそギターだという確信と、これがギターなのか?という驚きを、両方兼ね備えた奇跡的な傑作。

PATRICK PULSINDER
"Easy to Assemble, Hard to Take Apart"
CHEAP/FORM & FUNCTION
 先行シングルも評判だったパルシンガーのジャズ・プロジェクト。といってもそこらのインチキな「クラブ・ジャズ」とはまるで違う。欧州のジャズ・シーンの最前線プレイヤーたちの演奏をコンピューターでカット&ペースト&エディットしまくった超意欲作。

V.A.
"room 106"
CIRQUE
 半野喜弘のレーベルより「〈家具としての音楽〉を持ち寄って架空の部屋を創るというコンセプト」のコンピ。半野氏の現在の活動を反映して日仏のアーティストが参加。GELことDORINE_MURAILLE、青木孝充、EATER、DISCOMのメンバーなど。全体に詩的。

SOGAR
"Apikal.Blend"
12K
 本年1月の初来日も好評だった、ソガーことユルゲン・ヘッケルの待望のサード・アルバム。ゆるやかに泡立ち、波打つ電子音の粒々が、牧歌的なメロディを形作っては、また融け去っていく。フェネスのアレやイーラーズのアレにも比すべき、文句なしの大傑作!

時と哲学
"およぐチワワ おちるトンボ"
MEATMOON
 結成後10年を経ながら、いまだに録音メンバーが一度に会したことさえないという多重録音エレポップ・ユニット、略してトキテツ。実は初めて聴いたのですが完全にヤラレました。痛快で愉快で明快で爽快なワンダーフル過ぎるポップ・ワールド。ジャケも最高!
 
ジェフ・パーカー
"Like-Coping"
P-VINE
 トータス/アイソトープ217/シカゴ・アンダーグラウンド・カルテットのギタリストが、初のソロ・アルバムを完成。21世紀型チャーリー・クリスチャンともいうべきパーカーの独特の手クセ技を、たっぷり聴けます。エンジニアは勿論ジョン・マッケンタイア。

ヴィア・タニア
"アンダー・ア・ディファレント・スカイ"
P-VINE
 タニア嬢は、トータスやシー・アンド・ケイクなどのエンジニアやPAとして知られるケイシー・ライスの奥方。このデビュー作ではケイシーは勿論、錚々たるシカゴ勢にあのプレフューズ73までプロダクションに加わり、彼女のコケティッシュな歌声を彩っている。

アジタ
"エンアンチオドロミア〜相互反転"
P-VINE
 かつてシザー・ガールズやブライド・オブ・ノー・ノーといったバンドで、カオティックでストレンジなサウンドをやり倒していたアジタ嬢が、マッケンタイアのマジックで大変身。しっとりと落ち着いた歌声と優美な旋律は、まるで女性版ロバート・ワイアット?

RICHARD YOUNGS
"Airs of the Ear"
JAGJAGWAR
 ローファイ・ミニマル・ミュージックの鬼才にして近年はジャグジャグワーから素晴らしいソング・アルバムを次々と発表してきたグラスゴーの聖ヤングス。シリーズ(?)4作目となるこれも溜息もの。聴く者の心を安らかに鎮めてくれる、真のサイケデリック。

豊田道倫
"人体実験"
リトルモア
 またの名をパラダイス・ガラージ、って断る必要ないね。なんと通算10作目だそう。自宅録音、スタジオ録音、ライヴ録音、等々をまぜこぜにしながらも一息に聴かせる集中力はやはり凄い。歌うこと、弦を掻き鳴らすことの切羽詰まった必然性が音の端々に宿る。
 
BLACK DICE
"Beaches & Canyons"
FATCAT
 NYのアンダーグラウンド音楽シーンおよびアート・シーンで話題沸騰、世界の要注意レーベルから引っ張りだこのブラック・ダイス。肥った猫の影響力によって今後ますます注目されるでしょう。サウンド的には90年代半ばくらいまでのボアダムズにそっくりです。

近況: というわけで還ってきました。タイトルは異なれど精神はUMのままです。毎回ノンジャンル、メジャー/インディ関わりなく、独断と偏見で選んだ20枚を紹介します。花粉症が酷くて、朝目覚めると鼻が完全に詰まってたり瞼が貼り付いてたりします。そのうち大変なことになるんじゃないかと不安。最近読んだ本は『現代文学』福田和也、『阿修羅ガール』舞城王太郎、『クリプトノミコン』ニール・スティーヴンスン(読みかけ)。

Last Update : 2003/11/16